
今回はチーク材ということで、加工に何かと時間が余分にかかる。一番の理由は、刃物が切れなくなるからである。堅いナラ材の10倍は刃物の摩耗は早い。
ぼくの家具づくりは、とにかく刃物による加工が多い。手道具はもちろんのこと、機械加工も結局は刃物。写真はアーチ状になった笠木だが、これも帯ノコでアーチに切断したもの。帯ノコというのは、胴の長さが3メートルぐらいの輪っかになった鋸である。刃の数は何百とついているので、通常は、すぐに切れなくなることはない。今回のチークに限っては、8脚目あたりで、もうノコが滑りだし、限界。 すぐに、ノコを交換して作業を再開。それが全ての道具においてそうなるわけだから、チークで作る事を依頼頂いたときには、もう覚悟はしてかかっている。 それから、チーク材独特の油を含んだ切削粉。これらは、とにかくまとわりつく。精度を出していくためにも、作業中のエアーは手放せない。
なにかと手間がかかる木であるが、それ以上の価値のある家具になりそうである。
この椅子は、試作をしたときに、バイオリンを創るように全てフリーハンドで行った。定規を使っていない。
円をかくのもコンパスも使わないで。曲面は自分の体を使って、だから、ぼくの体に記憶した感性で感覚で創作した。
出来上がったものを計測し、できる範囲で図面にして数値にして、加工の道具の製作をした。
それでも、最終的には感覚に頼る部分が多く、フリーハンドによる加工の楽しさと緊張感が、とても新鮮である。フリーハンドといっても、精度は結果的にどうしても出てしまうのだが、全然出来上がりの何かが違う。
その一番違いは、美しい楽器に例えるなら、温かな感触とともに共存する音色の違いだと、ぼくの手が体がわかっている。