荒削りだった背もたれの部分も削り、背中の感触も確かめて、なかなかの納得の椅子。
木のフレームの場合はどうしても収まりが悪いジョイント部がスカッといくのは、さすがに金属ならではの椅子である。
こんな感じの全体に丸みをおびた形は、魚のフォルムを参考にしている。
だから削っているときに迷ったときには、なめらかな魚を思い浮かべてはまた手を動かし削っていった。
そういう無理のない自然な曲面になったから、なんだか良かったな。
人が見るためのデザインではなくて、使うための道具だから、まず構造となる。
その中で、昔ながらの木工や鉄鋼の技術で、ちゃんと作ることを優先している。
こそくなことはしないで、やれることで最大に美しく成り立たたせたいと思っている。

なんだかね。
家具というジャンルに収められてしまうと窮屈で、正直たまに辞めたくなる時もある。
でも、人に会ったり、生きることの願いや希望に出会ったとき、無性に作り届けたくなる。
それは自分そのもので、辞めるとかそういうことではなく生涯をかけ一つ一つをつなげていくのが人生かと思っている。
そして、楽器や自然の変化やフォルムを見ていると静かにちゃんとまた立つことができる。
僕はずっと気持ちで作っているよ。
構造と素材に誠実に。
構造ありきの、ハサミや包丁などのツールや音楽を奏でる楽器などは、優先すべき機能からデザインも似たものが多いけど、当たり前かもね。
それがステンレスなのか鋼なのか真鍮なのか、、メープルなのかスプルースなのかとか、、。
デザインは似ているけど、どんな人がどんな思いで作っているのかで、全然違う価値のものになっている。