12.18 Sat
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こちらは頻繁に登場する安楽椅子の座面です。背面の籘編みと意匠を合わせるために施した、籘の捨て巻きの上から、強度のある椅子用の麻のベルトを専用の釘で打ち付けていきます。
この素材と専用の釘もそうですが、用と美が共存していて、うれしくなります。この素材も古い家具に用いられているものです。
本格的に、温故知新なことばかりです。

それでこの椅子ですが、今回は試作ではありません(笑)!!
座りやすい椅子を求めご依頼頂いたクライアントの椅子です。
この椅子の座りごこちには、私はとても自信を持っています。なぜなら、この椅子のコンセプトは座りやすい椅子だからです。
納得いくまでトライしてきましたので、確信があるのです。

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この麻の編み込み面が、ほどよい曲面で体重を支え腰のある座り心地にしてくれます。
だから、ソファのような柔らかい座り心地とは違います。
それは、まるで、人に抱っこされているような安らぎに近いと思いました。

私の作る家具は、比較できるものがなくなってきているような気がします。
とくに、安く作ることを優先している物とは、明らかに違います。

物の命を生み出しているのですから、そこに安く作ることが目標ではとても無理です。
もちろん、作業性を上げるための道具や効果のある技法などは積極的取入れます。
少しでもスムーズにできないか頭と体を使って、ありとあらゆる方法を試し続けています。

もう少し。
安い物を作るのは、そんなにむずかしいことではありません。
また、似たような用途で、安くする方法はたくさんあります。
巧みに、安さを売りにすることは、プロならたくさん思いつくはずです。
私の作る家具のことを、私自身は高いとも安いとも思っていません。
これ以上でもこれ以下でもなく、そのままです。それは私が職人として独立した日から変わっていません。

工房とお店がいっしょになっている一番の理由は、作った家具を、シンプルに売りたいからです。
シンプルな形態でないと、それこそ、それ以上の価格になっていたのでしょう。

でも、世の中は、製造原価があって、販売価格があって、物の本当の値段というのが良くわかりません。
そういう意味でいうなら、余計なお金がかかっていない分、安いと言えます。

私自身は、
価格に関しては、それ以下でもそれ以上でもないというのが、一番ピンと来ます。
価値に関しては、それ以上を、常に目指しています!


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